「平昌五輪後は人目が気になって外に出られなくなった」 小平奈緒が注目される生きづらさのなかで見つけた人とのつながり 今後の新たな挑戦 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

【勝つことだけがすべてではない】

 4回の五輪を経験し、世界の頂点に立つことや、世界記録樹立も果たした一方、ケガなどで苦しんだ時期もある。そんな競技生活のなかで、自分がスポーツをやる意味や、意義も考えてきた。

「スポーツの世界では人間力が必要と言われるけど、私はそれがあまり好きではなくて、人間力ではなくて人間性だと思っているんです。やっぱり"力"となると力比べになってしまう。強くなくてもそれぞれの良さが輝いていれば、それがスポーツの良さではないかと思うんです。勝つことを目指すのは悪いことではないけど、それだけが目的になってしまうとスポーツの中身が無機質になってしまう気がするんですよね。

 確かに私も世界記録や五輪の金メダルという『目標』を掲げていましたが、その先に『目的』を持つようにしたいと考えていました。子供たちの前で話した時には『一番上に来るのは目的で、それは私にとって唯一無二の自己表現だった』と言ったんです。その唯一無二の自己表現を目指すためには目標も必要で、勝つこともその自己表現に深みを与えてくれるものだと。だから、勝利を目指すことにスポーツの意味があるというところは伝えていきたいけど、そこに縛られすぎてはいけないということも伝えたいんです。

 そこがゴールになってしまうと、叶わなかった時には心が折れるし、叶った時にもプツンと人生が終わってしまう。スケートだけで叶えたい目的ではなく、人生の目的をその上にちゃんと設定しておけば、どんな人生だったとしても、目標を変えてもう一回歩き出せるのではないかと思います」

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