「ホント天国か地獄かって感じですね」。アーチェリーの銅メダリスト武藤弘樹が振り返る責任重大のあの場面

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by JMPA

東京五輪、男子アーチェリー団体戦で銅メダルを獲得した武藤弘樹東京五輪、男子アーチェリー団体戦で銅メダルを獲得した武藤弘樹 東京五輪、男子アーチェリー団体戦で史上初となる銅メダル獲得に大きく貢献したのが、武藤弘樹だ。古川高晴、河田悠希とともにチームを組み、ラストの重役を担った。ブロンズメダルマッチでも最後に運命の矢を放ち、見事ど真ん中を射(う)ち抜いた。

「射った瞬間、真ん中に入ったと思いました」

 それが誇張ではないことは、射った直後、テレビ画面に映し出された自信満々の表情から読み取れた。真ん中に当たるのは必然という目をしていた。

 アーチェリーを始めてから12年。銅メダルを獲得した一矢は、誰にもマネできない圧倒的な練習量から生まれたものだった。

 武藤がアーチェリーを始めたのは、愛知県・東海中時代である。

 東海中といえば東海エリア屈指の超エリート私立校だ。そこで、たまたま友人に連れていかれたアーチェリー部。矢を射る先輩の、緊張感が張り詰めたような所作に憧れ、「格好いい」と思って始めた。センスがあったのか、一緒に入った友人よりも上達が早く、秋の大会に出場した。「武藤ならできるよ」と先輩に言われ、その気になって大会に臨んだが、緊張で「ボロボロの結果」に終わった。優勝したのは、特に目立たない普通の同級生だった。

「クソっと思いましたね。もう負けたくない。そう思って、そこから真剣にやるようになりました」

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