見延和靖が振り返るフェンシングエペ団体金メダルの舞台裏。「作戦がうまくハマった」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

「最大の勝因は世界最高峰のフットワークを持っているから」と語る見延和靖「最大の勝因は世界最高峰のフットワークを持っているから」と語る見延和靖この記事に関連する写真を見る

フェンシングエペ・見延和靖インタビュー(前編)

 東京五輪の男子フェンシングエペ団体で金メダルを獲得した見延和靖。これまで日本男子エペの歴史を切り開き、16年リオデジャネイロ五輪は初出場ながら6位入賞を果たした。18~19年には年間世界ランキング1位にもなった見延は牽引者であり続けた。

 東京五輪は日本男子エペの実力の証明として、団体戦金メダル獲得を命題にした。「メンバーは全員金メダルを目指していたけど、そこにかける思いは人一倍強かったと思います」と五輪を振り返る。

 自ら掲げた命題を見事実現してみせると、「普段のワールドカップなら、優勝してもこちらから『優勝しました』と報告しなければいけないけど、今回はそうする前にみんなから『おめでとう』と言ってもらえたので。改めて五輪の持っている力、影響力のすごさを実感しました」と笑顔を見せた。

 実は、この東京五輪に向けた選考レースで日本は自力出場が叶わず、開催国枠での出場になっていた。そのためフランスやROC(ロシア・オリンピック委員会)などは準々決勝からの出場だったが、日本はベスト16に相当する位置からのスタートだった。見延はそれが今回はプラスに作用したと言う。

「結果論かもしれないけど、僕はけっこういいクジを引いたなと感じていました。初戦のアメリカ戦さえ越えれば次はフランス戦だけど、こっちは2戦目で向こうは初戦になる。どのチームも初戦は緊張するから、ランキングの高いチームを叩くには、いちばん番狂わせを起こしやすいんです。

 特に五輪は強いものが勝つだけではない大会だと思います。それこそ個人戦で優勝したロマン・カノヌ選手(フランス)は、もともと個人戦に出場する予定ではありませんでしたが、ドーピング違反の選手がいたので出られた選手です。そういう番狂わせというか、不思議なことが起きるのが五輪で、実力だけではなく運や時の流れを味方につけないと勝ちきれない。その点では僕たちも1年間の延期とか、いろんなものがうまく絡み合って優勝できたのだと思います」

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