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見延和靖が振り返るフェンシングエペ団体金メダルの舞台裏。「作戦がうまくハマった」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

「フランスに勝ってからは、『もう怖いところはない』とチームがどんどん勢いづいていく感覚がありました。最後まで安心はできなかったけど、僕自身も気持ちが高ぶってきて、何か『いけるな』という自信がどんどん沸いてきました。

 最後のROCとの決勝も、みんながどんどん調子を上げていってたし、守るだけではなく強気の姿勢で攻めていっていたので、『これなら絶対に優勝できるな』という思いがありました。やりたいことをやれば点数がとれるような状況だったので、アドバイスというより、弱気にならないようにポジティブな言葉かけをするだけでした」

 1964年東京五輪以来の男子エペ団体出場で、いきなり実現した頂点。実際に優勝を手にした時、見延には驚きはなかったという。「ワールドカップも含めれば初優勝ではないし、絶対に獲れるチームだと僕は信じていた」と。あとになってから改めて「すごいことをやってのけたな」とは思ったが、「この優勝がこれからのプレッシャーになることはないだろうし、自分たちがやってきたことは間違いなかった、という自信につながったことが大きかった」という。

「フェンシングの中でも競技人口が最も多いエペで、日本がトップに立てた最大の要因は、世界最高峰のフットワークの能力を持っているから。それに加えてサーシャ(ゴルバチュクコーチ)が伝授してくれた本当のエペの技術がうまくミックスして、日本独自のエペのスタイルが確立されてきているからだと思います」

 エペの基本はフランスが得意にしているような、「クードゥブル」という両者得点となる「同時突き」だと見延は言う。団体は9試合あるが、各選手が5点中4点を同時突きにして1本だけこちら側がとる展開を積み重ねれば、最終的には9点差になる。だが日本人の場合は体格的に不利な面があり、突っ込んでいかなければ同時突きができない。距離とタイミングが完璧な相手に対しては、フットワークのスピードや剣の動かし方などの駆け引きを工夫して、相手を崩していかなければいけない。東京五輪では、それをある程度確立できたからこその、栄冠だった。

(後編へつづく)

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