「飛ばないとうまくならないのに飛べない」。飛び込みの坂井丞、持病と闘いながら東京五輪でメダルを狙う

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

坂井は、2010年ごろからコリン性蕁麻疹(じんましん)を患っている。汗に反応して出る蕁麻疹で、気温差や運動による発汗刺激によって体温が上昇した際に生じる蕁麻疹だ。症状はかゆみよりも痛みが激しくなることが多い。

「自分は、かゆいのもありますが、後頭部、背中、足の甲とかに針で刺されるような痛みが出るんです。そうなると体を冷やすしかできなくて......その痛みとの戦いでしんどかったですね」

 運動による発汗でも蕁麻疹が生じるので、練習はかなり制限されることになる。坂井は、アップはもちろん、プールでの練習もままならなかった。

「ウエイトはできないですし、ランニングとか有酸素運動もできなかったです。プールの練習も温水が多いので、本数を重ねて練習ができない。1、2本に集中して飛び込むことしかできなかったんです。そういう意味では1本1本に集中できるのでいい練習にはなるけど、自分が思うような調整はできなかったですね」

 家からプールに向かい、暖かい温水プールにいくと蕁麻疹が出るので怖くなり、駐車場に着いても車から外に出られなかったこともあったという。また、蕁麻疹が出ると痛いという恐怖心から汗をかくような場面ではないところでも汗が出て、ストレスがたまり、日常生活や競技に大きな支障をきたした。

「飛び込みをやめようとは思わなかったですけど、体に蕁麻疹が出すぎたので、限界なのかなぁって思うことはありました。やっぱり思うような練習ができなくて、競技力が上がっていかないのは苦しいですよ。飛ばないとうまくならないのに飛べないのはつらかったです」

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