錣山親方が稽古で見た貴景勝。「2場所休場のブランクは大きい...」 (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 さて、先場所(名古屋場所)は、このコラムで私が毎場所のように、「優勝候補」として名前を挙げていた鶴竜が、7場所ぶりに優勝してくれました。

「してくれました」と表現したのは、私の現役の最晩年(2001年)、16歳で井筒部屋に入門してきたのが鶴竜で、私たちは「兄弟弟子」という間柄なのです。ですから、どうしてもがんばってほしい...という思いが強くて、その期待を込めて、毎場所、名前を挙げていました。ただ、名古屋場所前は、鶴竜の情報がまったく入ってこなかったんですよね。入門した時から、相撲に対して真面目な男ですから、稽古をしていないとか、そういうことはないだろうと思っていましたが、まさか、腰痛で治療に専念していたとは、知りませんでした。

 場所前、突如、腰痛に襲われた鶴竜は、イヤ~な気分になったみたいですね。というのも、この3年、名古屋場所は休場が続いていて、結果が残せていなかったので、「またか!」と思った...と。けれども、場所に入ってからの集中力はすばらしかったです。腰痛で苦しんでいるなどということは微塵にも感じさせないスピード相撲で、相手力士を圧倒。12連勝というのも、初めてのことだったそうですね。速い攻めを心がけた結果、14勝1敗で6回目の優勝。相撲に真摯に取り組んでいると、こういうこともあるんですね。

 鶴竜の所属する井筒部屋には若い衆が少ないので、かつては私の部屋から鶴竜の付け人を派遣していたことがありました。小結・阿炎、十両・彩も付け人の経験があるのですが、鶴竜は付け人たちを連れて食事に行くなど、とてもかわいがってくれていました。ただ、肉が大好きで野菜をあんまり食べないから、もう少し、野菜も食べてほしいなぁ(笑)。

 16歳だった鶴竜も、先月で34歳。年齢よりも、まだまだ体は若々しいし、衰えが感じられないんですよね。今場所は欲を出して、ぜひ連覇を狙ってほしいところです。

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