五輪メダルも通過点。カーリングの「ど変態」本橋麻里の戦いは続く (3ページ目)

  • 竹田聡一郎●文 text by Takeda Soichiro
  • photo by JMPA

「私は変態ではありません。ど変態です(笑)」

 全身の力が抜けた。

「素敵な記事、変態の称号、ありがとうございます。改めて、私は周りに生かされてる人間だなぁと感謝しかありません」

 しばらくPCの前から動けなかった。目元を拭(ぬぐ)ってから、「ああ、こういうところだなあ」と確信した。

"クソガキ"と自称する鈴木夕湖や、先に五輪を知った姉にコンプレックスを抱いていた吉田夕梨花、その五輪を経験しながら居場所を失った吉田知那美、勝てない責任を負いすぎたスキップの藤澤五月。クセが強く、傷を持ったメンバーが彼女のもとに集い、「麻里ちゃんにメダルをかけてあげたい」と、もがきぶつかりながらも、ひとつになった。

 彼女らは本橋のカーリングへの思いを肌で知っている。本橋はスポンサー集めに走り、誰よりもアイスに乗り、トレーニングは欠かさない。「内側からチームにいいプレッシャーをかけたい」と公言する。

 本橋とともにチームを立ち上げた馬渕恵さんも、「あのマリリンが、大きくなりましたよね。いろいろなものを腹に飲み込んでチームに尽くしているんですもん」と、泣き笑いで教えてくれたこともある。

 本橋のその思いは銅メダルという形として結実した。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る