渡部暁斗、つぶれる覚悟で「ドイツ軍団」に突っ込んだ戦いに悔いなし (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 レースを振り返って、勝ちきれなかった要因をこう分析する。

「勝つために前半から飛ばしていったので最初は離れましたが、ドイツ勢が合流してからは一気にスピードが上がってガーッと詰められてしまった。なので、今回のひとつ目の失敗は、前半から飛ばして体を使い過ぎたために、最後は力が残っていなかったことです。失敗その2は、これは仕方なかったけど、最初から一緒にトップを滑っていたノルウェーのリーベルの方が、今日は明らかにスキーが滑っていたのに、彼はそういう走り方しかしない選手なので前に出てくれなかった。『こいつ、力を残しているな』と思いながらも僕が引っ張らなければいけなかったので、それがちょっともどかしかったですね」

 ドイツ勢も追いついた時に、すぐに前には出ず、渡部の後ろで少し休んでいた。彼らもまた追いかけるために脚を使っていたためだ。

 そんな中、渡部は最終周回のラスト1.5km付近でスパートをかけた。

「河野孝典ヘッドコーチと金メダルを獲るためには、いつもと違うこと、予想外のことをしなければチャンスはないだろうと話して、仕掛けると決めていたところでした。確実にドイツ勢やリーベルの方が力は残っていたけど、悔いが残らないようにと思っていきました。それで脚がフラフラになったところで接触してバランスを崩して......、という結果でした」

 勝つためのレースをした渡部は「結局自分がレース全体の90%は先頭を走っていたような感じで。だから悔しいけど悔いはないみたいな、よくわからない感じですね」と複雑な表情を浮かべる。

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