夏のメダリストも驚く、複合・渡部暁斗の「五輪でも動じない」メンタル (4ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by AFLO

 渡部選手のコメントからは、どんなに頑張っても自然の環境には逆らえない、つまり風には抗(あらが)えず、偶発的なものが競技へ影響することを受け入れ、そこに一種の諦めともいえる気持ちがあって、だからこそ、それ以外のところでベストを尽くし挑んでいくという考えが伝わってきた。

 ノルディック複合という競技で、シーズンを通して世界中で戦うことをライフワークとしている渡部選手の「平昌五輪がすべてではない」という価値観は新鮮だった。W杯を戦いながら、その途中に4年に1度の大舞台、平昌五輪があると考えられるところに、自然体でいられるしなやかさあるのかな、と私は推測した。

 彼の安定したメンタルを感じたコメントが、もうひとつあった。

 記者がしきりに、五輪前最後の実戦、地元白馬での大会で、地元の歓声に特別なものを感じましたか?と尋ねた質問に渡部選手はこう答えた。

「白馬が特別ということはなく、大会時の歓声はどの国でも嬉しいものです」

 渡部選手の最初の登場は2月14日だ。

 彼は本番までに、まだまだ状態は上げられると話した。ジャンプもクロスカントリーも細かい動作をビデオでチェックし、精度を上げていきたいという。すべてを懸けて挑む平昌五輪。風も歓声も味方につけて、自然体のまま金メダルまで辿り着いてほしい。



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