初戦失格のショートトラック吉永に
松田丈志が「次はやれる」と言う理由 (2ページ目)
接触の多いショートトラックではあるが、吉永選手は攻めのスケーティングとともに、クリーンなスケーティングが持ち味だっただけに、意外なシーンでもあった。
本人も接触してしまった場面については、「攻めるタイミングをもう一呼吸置いてもいいシーンだったが、気持ちが焦ってしまい強引にいってしまった」と振り返る。
一方で、五輪という舞台で自分の力が通用すると感じたレースだったという。会場の大歓声を聞き、改めてここで結果を出したいと意を強くしたそうだ。
「実力がなければ、五輪の舞台で攻めることはできない」
日本水泳連盟会長だった古橋広之進名誉会長の言葉を思い出した。かつて日本競泳界が世界のレベルから大きく引き離されていた時期、代表チームのレースを観戦した古橋広之進さんが「誰か前半から積極的に泳げる選手はいないのか」と嘆いたという。
当時まだ日本代表ではなかった私だが、その言葉が強く印象に残っている。競泳のレースでも、世界の舞台で後から追い上げていきましょうという"守り"のレースではもう勝負に間に合わないのがほとんどだ。実際に五輪で、守りの姿勢で結果が出ることはほぼないだろう。しかし、勝負どころを見極め、そのタイミングで力を発揮するため、その時まで冷静にレースを展開するのも逆説的だが、"攻め"の姿勢だ。
私が考える最もダメなレースは、とにかくいくだけいくという玉砕型のレースだ。レース全体の展開を考え、自分のパフォーマンスが最大限発揮できるようにレースを展開するのと、ただガムシャラに前半から押していくレースでは訳が違う。競泳でも大事なときに、イチかバチかで自ら玉砕しにいくようなレースをする選手もいたが、それは自分の可能性を最大限引き出す戦術ではないだろう。
自分の可能性を引き出すには攻めるレースが必要だ。しかし、そこには冷静さも兼ね備えなければならない。
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