2014.09.12

【レスリング】世界選手権、若手台頭で吉田・伊調も危うし?

  • 宮崎俊哉●構成・文 text by Miyazaki Toshiya photo by AFLO

 階級変更にともない、吉田沙保里が55キロ級から53キロ級へ、伊調馨が63キロ級から58キロ級へ落として臨んだ2014年レスリング世界選手権(ウズベキスタン・タシケント)。「常勝軍団」日本代表女子チームには、いつもとは違う雰囲気が漂(ただよ)っていた。

初めての階級ながら世界大会15連覇を果たした吉田沙保里 勝負の世界、何が起こるか分からない――。世界選手権・オリンピック合わせて吉田は15回目、伊調は12回目の出場となり、それぞれ慣れた舞台のはずだ。しかし本人はもちろん、監督、コーチなどチーム全体が大きな緊張感に包まれていた。

 彼女たちが所属するALSOKの大橋正教監督は言う。

「それが、初めての階級で戦う、ということです。吉田の優勝も、伊調の優勝も、疑っていません。それでも、何が起こるか分からない……これまで以上にね。リードされることがあるかもしれないし、ピンチになるかもしれない。すべて覚悟しています」

 高校、大学でふたりを育て上げ、現在は日本レスリング協会強化委員長を務める栄和人女子チーム監督も、表情は固かった。どんなときでも笑顔でマスコミの取材に応え、サービスを欠かさない男が、試合前に口をつぐんだ。ダブル優勝は確信しているだろうが、勝負の怖さを知りぬいた闘将だからこそ感じる、未知の世界への不安が伝わってきた。

 伊調は今年1月、ロシアで行なわれたヤリギン国際大会に58キロ級で出場。吉田は今年3月、日本開催のワールドカップ国別対抗戦を53キロ級で戦った。だが、両大会はプラス2キロ計量――、レスリングではオリンピックやアジア大会、世界選手権などの「チャンピオンシップ」以外の大会は、リミットプラス2キロまでOKというルールがある。そのため、彼女たちがリミットで外国人選手との公式戦に挑むのは今回が初めてだ。

 10月に32歳となる吉田。6月に誕生日を迎えて30歳となった伊調。30歳を過ぎてからの階級変更、しかも体重を落としての変更による肉体的負担は計り知れない。アテネ、北京オリンピックのころは練習後もはしゃいでいたが、最近は「疲れた」が口癖となり、回復力は確実に落ちているようだ。