【レスリング】世界選手権、若手台頭で吉田・伊調も危うし? (3ページ目)
チビッ子レスリング時代からの恩師であり、今も伊調が「レスリングのお父さん」と慕う八戸クラブの澤内和興氏は、「63キロ級は作らされた階級。58キロ級こそ、(伊調)馨の階級です。レスリングをよく研究しています。練習してきた技をどんどん出せるので、楽しいんじゃないですか」と評した。
これが、オリンピック3連覇を遂げ、さらなる高みを目指し、リオデジャネイロオリンピックで4連覇に挑む真のチャンピオンの強さなのか――。その強さ、偉大さに、栄監督も大橋監督も、「お見事! さすが!」と感嘆しかない。
日本代表女子チームにとって嬉しい結果は、吉田・伊調だけではない。48キロ級では大学3年生の21歳、登坂絵莉(至学館大)が大会2連覇を達成。リオデジャネイロオリンピックの48キロ級金メダル候補ナンバー1に躍り出たのはもちろん、2020年東京オリンピックでも日本のエースとしての期待が高まる。
また、これまで吉田に阻まれ、代表の座を逃してきた55キロ級・21歳の浜田千穂(日体大)は、階級増加によって掴んだチャンスをモノにし、世界選手権初出場で初優勝を飾った。55キロ級はオリンピック階級でないため、年末に行なわれる全日本選手権からは53キロ級に下げて吉田と戦うか、58キロ級に上げて伊調と戦うかの選択を迫られるが、優勝インタビューで浜田は、「世界のタイトルを獲れて、これでようやく沙保里さん、馨さんに挑戦する資格を得たと思います。まだ上げるか下げるか決めていませんが、全力でぶつかっていきます」と力強く語った。
決勝戦で足を痛め(11日現在、骨折の疑い)、惜しくも金メダルを逃した69キロ級の土性沙羅(至学館大)は、昨年の銅メダルからワンランクアップの銀メダル。吉田沙保里の父、故・栄勝氏に鍛えられた19歳は、重量級ながら世界の強豪相手に鋭いタックルを連発。リオまでの2年間で、どこまで成長するか楽しみな存在だ。
大会後、吉田は言った。
「若手のメダル獲得は刺激になります。それが、この大会で得た一番の収穫。国内の戦いは、今後ますます厳しくなるでしょう。日本で勝てば、オリンピックで金メダルを掴める。そんな時代になってきました」
今回の世界選手権では、改めて日本の強さが浮き彫りとなった。試合後、伊調がちょっと照れながらマットを1周して掲げた日の丸の姿は、世界への強烈なアピールになったことだろう。
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