名門レスリング一家の最終兵器・山本アーセン、リオ五輪への誓い
レスリング界にとてつもない怪物が現れた。山本アーセン、17歳。すでに世界カデット選手権(年齢枠16、17歳)やハンガリー選手権を制した実績を持つ。祖父はミュンヘン五輪で日本代表だった郁榮、母親は史上最年少で世界王者になった美憂、さらに総合格闘家の"KID"徳郁は叔父で、世界選手権V4の聖子は叔母というサラブレッドだ。
4月、全日本ジュニアレスリング選手権にグレコローマンスタイル66kg級で出場。山本アーセン(上)以外、出場選手はみな大学生だった 一族が集まったらどんな会話になるの?と訊くと、アーセンは笑いながら答えた。
「食事の時でも、あのタックルはね!という話になる。お母さんとはきょうだいみたいな関係ですね。普通にベッドの上でバックドロップをかけたりしていますよ(笑)」
アーセンがまだ3、4歳の頃、筆者は彼のタックルを目撃したことがある。そのスピード、相手の懐(ふところ)に入る踏み込み......とても幼児とは思えない動きだった。案の定、小学校に入学すると、何度となく全国少年少女レスリング選手権で優勝する。アーセンにとって、レスリングは遊びの延長だったという。
「小学校低学年の時、平日の放課後は友達と遊んで土日はレスリングの練習。週末になったら、やったぁ!みたいな期待感でいっぱいでした。レスリングもそうだけど、スポーツは楽しむためにあるものですから」
13歳になると、日本レスリング協会の福田富昭会長の計らいで単身ハンガリーへ。幼少時にハワイで暮らしたことがあったため英語には不自由しなかったが、ハンガリー語はしゃべれない。最初の数週間は本当にきつかったと振り返る。
「言葉がわからないし、友達もいない。でも、そういう時にこそ自分を見せなければダメだと思って、英語で俺はこういう男だよって笑いを織り交ぜながら説明しました」
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