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【スキージャンプ】男子ジャンプ陣も進化中。世界選手権で差した光明 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kishimoto Tsutomu

『自分が1本目と同じようなジャンプをすればメダルにも届きそうだ』という状況の中で、世界選手権に来てから苦しんでいた、踏切から空中にかけて前傾し過ぎるというミスが出たのだ。結果は118.5m。上位国に大きく離されて6位に落ちると、メダルの可能性は消えた。

「1本目は消極的になってちょっと縮んだジャンプになったというか、伸びるべきところで止まってしまった。そのジャンプに腹が立ったので、2本目は思いきり行った」という2番手の葛西が、131mのジャンプを見せたが、順位を5位にあげただけ。伊東は130.5mを飛び、4番手の竹内は127mと堅実なジャンプをしたが、メダル争いの勢いに乗って大ジャンプをしてくる上位勢には叶わず、メダルまで21.9点差(5位)という結果で終わった。

「いつもは大差でやられていたが、今回はそんなに点差もないし、メダルまでという期待感もあった。チームのレベルもトップにだいぶ追いついてきている」と葛西は言う。

 竹内も「最低でも4位。上手くいけばメダルまでいくかと思っていただけに悔しい。自分としては最後までラージヒルのジャンプ台に馴染めなかったけど、他国とのレベル差はそんなに感じなかった」と言うように、珍しいほどの僅差の戦い。各国のレベルが横一線になっていることを証明する結果だった。

 横川コーチは「スーツのサイズが小さくなって、今はパワージャンプが主流になっている。その点では日本勢も、バランス感覚の良さなどの長所はそのままに、パワーアップを図らなくてはいけない」と語った。しかし、彼がヘッドコーチに就任した2010年の夏から取り組んできた新しいトレーニングの効果は、確実に表れ始めている。だからこそ、今大会、日本のジャンプ陣は世界と僅差の勝負ができたのだ。

 来年五輪が行なわれるソチのジャンプ台も、助走路全体が大きなR(踏み切り前の助走路の傾斜が緩やかになる部分)を描く特殊な台で、踏み切りでは真上に立ち上がるパワーが必要になるという。横川コーチの思惑の中には、ソチ対策も含まれているのだ。

 その横川コーチは今回の収穫を「選手が悔しさを味わったこと」語る。それはメダルに届く状況まで来たからこそ味わえる悔しさだ。さらに今季は、春先に膝の故障で出遅れた伊東に代わり、竹内がエースとしての自覚を持って来たことも大きい。葛西は相変わらず地力を発揮し、伊東も徐々に戻ってきている状態。この3本の柱がしっかりして、あとは清水など若手が競り合えば、チームとしての層が厚くなる。

「できればノーマルヒルとラージヒルで、各1名ずつはメダル争いに絡めるようなチーム状態にするのが理想」と横川コーチは語った。

 今回の世界選手権で、個人の入賞は0に終わった男子だが、僅差の戦いの中で選手たちは手応えを感じ、次への意欲を大きくしたはずだ。日本男子ジャンプ界にも、少しだけ光が見えてきた。

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