【重量挙げ】三宅宏実が銀メダル。12年越しの夢を現実にした「父の作戦」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

銀メダルを手に父・義行さんと握手をする三宅宏実銀メダルを手に父・義行さんと握手をする三宅宏実 大会2日目の28日午後3時半(現地時間)から始まった重量挙げ女子48kg級。メダルを狙って出場した三宅宏実は、前回の北京と比べると格段の落ち着きを見せていた。

「金メダルを狙って勝負するなら、スタートの重量はスナッチが85kgでクリーン&ジャークは110kgにしようと思っていた。しかし、五輪は日の丸をあげるのが大事な大会。取れるところでキッチリ取ってメダルを確実にしてから最後に勝負をかけようと、昨日の夜に宏実と話し合って、83kgと108kgからスタートしようと決めたんです」

 三宅が重量挙げをやりたいと言い出した中3以来、二人三脚で競技に取り組んできた、68年メキシコ五輪銅メダリストの父・義行さんはこう話した。

 最初のスナッチの83kg。バーベルを一気に頭上に引き挙げた瞬間、三宅の尻は少し後方に落ちかけた。

「ちょっとビックリしましたね。1本目は緊張もあったし、アップ場が寒かったから関節も少し緩んでいたんです」と話す三宅だが、重量に余裕を持たせたこともあって、瞬時にそれを建て直し、しっかり立ち上がって成功させた。そしてその後も85kgと87kgを成功させて笑みをこぼす。結局スナッチでは、優勝候補の王明娟(中国)に次ぐ2位につけた。さらにライバルと目されたタイ勢もカムスリが3本失敗して記録無しに終わり、2番手のプラモンコールも82kgに止まりメダルに近づいた。

 続くクリーン&ジャークでは、最初の108kgを余裕で成功させると、続く110kgもきれいに差し上げ、その時点で銀メダル以上を確定させた。「スナッチに続いてクリーン&ジャークでも2位にさせたかった」という父親の指示で挑んだ113kgは僅かなミスがでて失敗したが、トータル197kgで銀メダルを獲得。優勝の王は、義行さんの読み通りのトータル205kgだった。

「父は銀メダルが決まったことより、最後の失敗を悔しがっていたんです。『113kgは取りたかった』って」と言って苦笑する三宅だが、「私からすれば、アテネと北京ではスナッチとクリーン&ジャークで1本ずつしか成功させてないけど、今回は3本と2本成功したのが本当に嬉しかったんです。それで順位も結果もついて来たし」と満足の表情を見せる。

 前回の北京では朝起きてから計量までに、体重が300gほど減る47.35kgになったことに動揺したのが敗因だった。

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