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町田樹のフィギュアスケート解説が異彩を放つ理由 引退後に研究者となった「プロフェッサー」の膨大な仕事量 (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Yoshiko Ryokai

 一方で、五輪を戦い抜くことが選手にとってどれだけ過酷かは、身をもって知っています。フィギュアはソチ大会から団体戦ができて、団体戦の直後に個人戦があり、約2週間という短い間に4回も演技をする選手もいる。そういうなかで戦っている彼らの努力、ひたむきな姿勢に報いたいという思いで、解説に必要な資料を準備して現地に乗り込みました。

 選手時代は観客席に行くことさえほとんどありませんでしたが、今回はスタンドからも競技を見ました。ミラノの舞台に立つ選手を通して、12年越しに、五輪に出ていた自分の姿を客観視できたような感じがしました。これだけの人に見られ、これだけ多くの人の手で、我々の演技は世界に配信されていたんだなと、ようやく理解できました」

── 詳しいが難解ではなく、わかりやすく教えてくれる町田さんの解説は、多くの視聴者を惹きつけました。いったい、どのような準備をするのでしょうか。

「私は男子とアイスダンスを担当したのですが、選手一人ひとりについて、ショートとフリー、それぞれの資料を作ります。男子とアイスダンスを合わせて最大104作のプログラムを解説することになるので、1作ずつ資料を作って手もとに置いていました。出国前にできる準備をしたあとは、その資料に現地の状況を見ながら、さらに情報を書き入れていきます。たとえば、過去の演技構成と五輪の演技構成を比較することで、それぞれの選手がどう戦略を変えてきたかも見えてくるのです。

 アイスダンスは選手としても解説者としても経験がないので、本当に勉強しました。男子シングルとは競技規則も違いますから、こまめな確認が必要です。必要なことは1枚にまとめて手もとに置きました。ページをめくる暇はないので、実況解説席で用いる資料作りは、とにかく視認性が大事なんです。

 ふだん担当しているグランプリシリーズは12人、ファイナルは6人ですが、五輪は男子シングルだけで29人、アイスダンスも23組が出場していました。それぞれがふたつの演技をするので、私がふだん解説している大会よりもはるかに多くのプログラムを一度に解説しなければなりませんでした。年明けから全力で準備して、2月の出国に滑り込みで間に合うような感じでした。

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