町田樹が駆け抜けたフィギュアスケート人生 悔しいソチ五輪、羽生結弦との感動的な激戦、突如の引退発表... (2ページ目)
【五輪直後、羽生結弦との熾烈な戦い】
「(五輪での)悔しさがあったからこそ、次の世界選手権があった」と言う町田。ソチ五輪閉幕から1カ月後に行なわれた初出場の世界選手権さいたま大会は、彼の競技人生におけるハイライトのひとつと言える。ソチ五輪金メダリストの羽生結弦の凱旋試合とも言える大会だったが、そこで繰り広げた羽生との熾烈な優勝争いは感動的だった。
SPで先手を取ったのは町田だった。羽生が冒頭の4回転トーループで転倒して91.24点と、ノーミスだったフェルナンデスに次ぐ3位になったことに対し、町田はノーミスの滑りで98.21点を獲得し首位発進を決めた。
「今日は不思議に無心になれて、最後までしっかり冷静に踊ることができました。98点は自分のなかで光栄だしうれしいですが、それ以上に1年間踊ったなかでベストの演技だったのがうれしいし、それができた自分を誇りに思います」
町田の演技構成点は、羽生に僅差の全体2位。こだわり続けた表現力も評価された結果となった。
2日後のフリーは、最初の4回転トーループを連続ジャンプにできず、2本目に2回転トーループをつける滑り出しになったが、そのあとは力強い演技を披露。ただ後半に入るとトリプルアクセルと3回転ループが着氷で若干乱れて、GOE(出来栄え点)加点をもらえないジャンプとなってしまった。
「最初の4回転は空中で失敗したと思いました。そこから自分の呼吸もペースも乱れて非常に厳しくて、途中では本当にヤバいと。でもこれが今シーズン最後の舞台だし、ここで負けたくないという思いだけでやって。最後はもう根性でした」
そう苦笑した町田。最後は疲労がにじみ出るほどだったが、大きなミスもなくまとめた演技で自己最高の184.05点を獲得し、合計も自己ベストの282.26点。ふたりあとに滑る羽生にプレッシャーをかけた。
そんななか、羽生も意地を見せた。完璧とは言えない滑りながらも、底力を発揮して191.35点を獲得する演技で、合計は町田を0.33点上回る282.59点。町田もよく追い詰めたが、羽生にはわずかに届かなかった。
それでも大会終了後、「まだプログラムにあ粗があったし小さなミスもあったので、自分にはまだ伸びしろがあると実感しました」と満足した表情を見せた町田。続けて、こう語った。
「全日本からソチまでは現状維持をするのが精一杯でしたが、ソチが終わってからは自分のなかで向上心がわいてきて、火に油を注ぐようにモチベーションが上がりました。一日一日進化してやろうと思ってやってきたのがこの結果につながったと思います」
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