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高橋大輔が「素直に喜べなかった」初の五輪代表入り 焦り、緊張のなかでも実感できた成長 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【「素直に喜べない」優勝で唯一の五輪代表に】

 だがトリノ五輪シーズンは順調だった。GPシリーズ1戦目のスケートアメリカで優勝し、GPファイナルは日本男子初の表彰台となる3位に入った。

 NHK杯優勝の織田信成との五輪代表をめぐる最終決戦となった2005年12月の全日本選手権。SPで高橋は、最初の3回転フリップ+3回転トーループをきっちり決めたが、次のトリプルアクセルがパンクしてシングルになるミスとなる。

「6分間練習でトリプルアクセルがそんなによくなかったので、不安になった部分もあります。跳んでやろうというのが強くなりすぎて力が入ってしまったけれど、最後までバテないで元気に滑れたのはよかったです」と、高橋が振り返る演技だった。

「失敗したわりに得点が出た」というように74.52点。ノーミスの滑りで79.90点を出した織田に次ぐ2位発進だった。

 フリーは織田が先に滑った。織田は最初に入れたトリプルアクセル+3回転トーループ+2回転ループの最後で転倒したが、そのあとはきっちり滑って146.20点を獲得。合計を226.10点にしてトップに立つ。

 そして高橋は、最初の4回転トーループが3回転になるミス。それでも次のトリプルアクセル+3回転トーループから立て直した。演技の後半に入ってすぐのトリプルアクセルはシングルになったものの、そのあとはしっかりと滑りきった。

「4回転はタイミングが合わず、トリプルアクセルも狙いすぎたが最後は上げられた。五輪に行きたいと意識してすごいプレッシャーでしたが、それと付き合っていかなければいけないと思いました」

 こう話す高橋のフリーの得点は148.60点で、合計は223.12点と織田に及ばず。流れ出る涙を高橋は、「悔し涙です」と説明した。

 だがのちに織田のスコアに採点ミスがあったと判明した。冒頭の3連続ジャンプ3本目の2回転ループは、3回転ループを挑んだうえの回転不足という判定に。2本跳べる3回転ジャンプは2種類までというルールがあり、トーループとループを2本ずつ跳んだあとの最後の3回転ルッツは無効となり、フリーの得点が変更。合計は218.70点となり、一転、高橋の優勝となった。当時の新しいジャッジシステムに不慣れだったことが招いたミスだった。

「順位が変わっての優勝というのは素直に喜べないです。ショートとフリーでアクセルをパンクしてなかったら文句なしに勝ったと思うので、やっぱり自分のミスだと思います」と高橋は話したが、「トリノ五輪へ行くなら全日本チャンピオンとして行きたかった」との自身に課したノルマは達成する形になった。

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