フィギュアスケート・樋口新葉が引退表明 「すべて出しきる」ラストイヤーで表現する人生讃歌 (2ページ目)
【ラストダンスで表現する人生賛歌】
スケーターが、競技から離れて戻ってくるのは簡単ではない。まずスケートを戻すのはしんどく、本当にスケートが好きかを日々試される。イメージした演技ができないことにいら立ち、結果が伴わず、心ない言葉を浴びることもあるだろう。五輪の舞台に立ってメダルも獲得したような選手にとっては、なおさら過酷だ。
しかし、樋口はブランクに苦しみながらも、自分の滑りを取り戻した。昨季は全日本選手権で坂本、島田麻央に次ぐ3位で表彰台に立った。ショートプログラム4位から逆転し、歴戦の戦巧者ぶりを見せた。
樋口は自慢の爆発力を抑えることで、スケーティングを安定させていた。経験のたまものだろう。3回転ルッツ+3回転トーループの大技を成功。得点が1.1倍になる後半のジャンプも、3回転ルッツ+ダブルアクセル+2回転トーループ、3回転ループ+2回転トーループと流れが途切れず、スピン・ステップは力強くレベル4獲得だった。
再生した樋口は、スケーターとしての厚みのようなものを感じさせる。復活を遂げ、心身ともにたくましくなった。"ラストダンス"に向け、一つひとつの舞台が特別になるはずだ。
「ショートは『My Way』という曲で、自分のスケート人生を表現するようなプログラムになっています。一つひとつのエレメントを大事に、それ以外でもつなぎなど表現の幅広さをすべて出せるプログラムになっているので、表現を注目してほしいですね!」
樋口はそう言って、最後のショートへの思いを込める。
「振り付けに行った時、曲をどうするかでいくつか迷っていました。試してつくりながら、どうしてもしっくりこなくて。3日目くらいに振付師のジェフ(ジェフリー・バトル)が『僕が引退する時に使いたかった曲なんだよ』って提案してくれたのが『My Way』。それがすごくしっくりきて、踊りやすそうだなって。最後のシーズン、締めくくりにちょうどいいプログラムになるなと思いました」
過去の彼女の楽曲は、『ライオンキング』に代表されるようにパワフルな表現が多かった。今回は真っ白なドレスにシルバーのストーンが入った衣装で、人生讃歌をうたい上げる。悲喜こもごもの生きざまを示す、壮大なプログラムだ。
2 / 3