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浅田真央コーチの挑戦「『スケート好き』という気持ちだけはなくさないように指導していきたい」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【プロと指導者の比率は「ハーフハーフ」】

 2026年度からは、日本スケート連盟主催・主管の競技会でコーチとして指導を行なう場合、日本スポーツ協会公認コーチの資格が必要になるため、資格取得の準備もしていく。指導コンセプトでこだわりを持つのは、自身が競技生活のなかで培ってきた氷上の技術や意識などだけではなく、さまざまな分野のトレーニングをミックスしてつくり上げる特別プログラムだという。

「私が選手の時に理想としていたプログラムというのは、リンクのなかでのスケートの練習だけではなく、ダンスやバレエ、新体操などのすべてをひとつの場所で完結できるようにするもの。それが何よりもスケートのためになるんじゃないかなと思っていました」

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 アカデミー生の募集年齢は9歳までの若年層に限定。その理由をこう説明する。

「フィギュアスケートでは10歳から全日本ノービス選手権に出場できるので、アカデミーで成長したスケーターが世界に羽ばたいていってもらいたいという思いがとても強い。9歳でも完成されているスケーターはいるかもしれないですが、できるだけアカデミーで育てていきたいという思いがあります」

 将来的な指導者としての活動と、プロスケーターとしての活動の比率については、2014年ソチ五輪後の発言を引用して、「ハーフハーフ」と言って会場を笑わせたが、当面は「指導のほうに全力集中する形にしたい」と浅田。

 アカデミー開設と同時に、4歳から小学3年生までのスケート未経験者を対象にした『木下MAOクラブ』も設立する。その意図を「フィギュアスケーターの人口を増やしたいという思いと、何よりスケートを楽しんでもらいたい。そして挑戦することの楽しさを多くの子どもたちに体験してもらいたいなというふうに思いました」と話した。

 ふだんはアカデミーの指導に専念し、クラブの指導も行なう予定だ。優秀なスケーターがいれば将来的にクラブからアカデミーへ昇格の可能性もあり、新たな人材発掘の場としても活用したい意図も持っている。

「私自身が指導者としては初めての経験となるので、これからスタートしながら自分もいろいろなことをしっかり考えて指導していきたいなと思っています。でも、やはり『スケートが好き』という気持ちがなければ努力もできないと思うので、スケーターの皆さんにはどんなことがあっても『スケートが好き』という気持ちだけはなくさないように、私たちが指導していきたいなと思っています」

 ずっと心に温めていた夢の実現。浅田真央は新たな一歩が踏み出していく。

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著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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