羽生結弦が『notte stellata』に込めた鎮魂の祈り 野村萬斎と創造した新世界にどよめき
『羽生結弦 notte stellata』レポート
『notte stellata』でコラボレーションが実現した羽生結弦(左)と野村萬斎この記事に関連する写真を見る
【念願だった野村萬斎との共演】
「とにかく......なんだろう、今日が千秋楽なのかなっていうぐらい、全体力と気力を使い果たしました」
羽生結弦は、静かに、ゆっくりと話し始める。
「それくらい一瞬も気持ちを切らさずに、この会場で滑っているメンバーと全員で『3.11』やいろんな災害に対してできることを、"何かのきっかけになるように"と願いながら、祈りながら滑らせていただきました」
3月7日夜、宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ。自身が座長を務めるアイスショー『notte stellata(ノッテ・ステラータ)』の初日を終えたばかりの羽生は、言葉を丁寧に選ぶように語った。
東日本大震災の発生からまもなく14年となる。地元・仙台で自らも被災した羽生が、人びとが笑顔になれるような希望を届けたいとの思いで『notte stellata』を2023年に初開催。イタリア語で「満天の星」を意味するタイトルは、震災後、停電で真っ暗の街から見上げた美しい星空に希望を感じたことから名づけられている。
3年目となる今回は、スペシャルゲストとして狂言師の野村萬斎を迎えた。萬斎が安倍晴明役で主演を務めた映画『陰陽師』の楽曲を使用した『SEIMEI』は、羽生の代名詞ともいえるプログラムで、10年前にふたりは対談もしている。萬斎との共演は、このショーの立ち上げ当初から羽生の強い念願だったという。
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