高橋大輔プロデュース『滑走屋』は新たなフェーズへ 村元哉中、村上佳菜子、友野一希らも進化
【パイオニアが生み出す一体感】
3月7日、広島。アイスショー『滑走屋』のゲネプロ(本番と同じ条件で行なう最終リハーサル)が終わった直後のスケートリンクで、座長である高橋大輔は集まった関係者に対し、笑顔であいさつした。
「僕はおもくそ、間違えてしまいました!」
和やかな笑いが起こり、一瞬で一体感が生まれる。少しも飾るところがない。高橋らしい屈託のなさだ。
その純粋さは、スケートへの真剣さに直結している。
3月8〜9日で開催している『滑走屋』 photo by N.Tanaka/Shutterz
高橋はシングル時代、フィギュアスケート界のパイオニアとなった。五輪でのメダル、グランプリファイナルと世界選手権の優勝などすべて日本人初で、前人未到の偉業を遂げた。
それにとどまらない。4年ぶりの現役復帰で、全日本選手権では準優勝。誰にも破ることはできない記録だろう。しかし、その後もアイスダンスに転向し、世界トップ10に迫り、全日本王者にまでなった。
その人物がつくり出す『滑走屋』が、半端になるはずがない。
1 / 4
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。