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宇野昌磨が成績より大切にした「小さい頃からの憧れ」 現役ラストダンスの自分は「幸せそう」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 坂本 清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

【"彼"はよくやったな、と】

 ラストシーズン、彼は原点に回帰した。最高難度の曲を選び、それを表現することに心身を捧げている。フィギュアスケートの深淵に近づくように。

「今となっては、当時はすごく意識高いなと思います。まだ引退して間もないですが、"彼"はよくやったな、と」

 宇野はそうやって道化になって、会場を笑わせた。

「自分は出会う方に恵まれました。自発的にはあまりやらない、内向きでインドアのタイプで。努力家と言ってもらえるのはうれしいですが、伸び伸びと好きにやれるようにサポートしてくれる周りのおかげで、全力が結果につながっただけで」

 彼は謙虚に語ったが、その気取らなさや真摯さが愛された所以であり、唯一無二のスケーターにしたのだろう。

 最後の大会になった世界選手権は、ショートプログラムで首位に立つもフリーは6位だった。総合4位でメダルも逃した。しかし、引退会見で使われたフリー演技直後の写真の彼は満面の笑みだった。

「この写真を見ると、成績が振るわなくても、これだけの笑顔で幸せそうだなって思います」

 会見での宇野は、背後にあるモニターに映った自分の写真を振り返って見ながら、感慨深げに言った。

「スポーツ選手である以上、結果は大事なんです。けど、それだけじゃないんだよって伝えられたのかなって。練習してきたものが試合でできなくて、悔しい思いをしたこともあったけど。毎日の積み重ねこそが大事で、笑顔で終えられる選手になれたのかなって思いました。小さい頃から、こうなりたい、と思っていた選手に近づけたのかなって」

 それは、ほんのひと握りのアスリートだけがたどり着ける領域と言えるだろう。

「こんな自分に憧れている人がいるなら、どの部分に憧れているのか、知りたいです」

 会見で、宇野はそう言って笑ったが、おごったところがない自然体こそ、魅力そのものだ。

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