坂本花織の葛藤と成長「アクセルも4回転もないのになんで世界女王やねんって言われて...」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【0.01点の執念で初制覇】

 最終滑走だった翌9日のフリーは、優勝争いをすると見られていたヘンドリックスは総合203.36点と得点を伸ばせず、坂本にとって有利な状況になった。「緊張は相変わらずすごかった」という坂本だが、0.01点でも上積みしようとする執念を見せた。

 着氷後に大歓声を浴びた冒頭のダブルアクセルはほとんどのジャッジが+4をつけるジャンプにし、その後も貫禄の滑り。だが、中盤の3回転フリップで着氷を乱して2回転トーループをつけられなかった。

 それでも、そのあとの3回転+3回転とダブルアクセル+3回転トーループ+2回転トーループを成功させ、コレオシークエンスのあとの3回転ループに2回転トーループをつけた。

「0.01(差)でも負けは負けだし、勝ちは勝ちなので。1個ジャンプ跳ぶか跳ばないかで点数も順位も大きく変わるので、ループをしっかり決めたら、ダブルトーループはつけられると思って」

 昨季までプログラムの仕上がりが遅く、GPファイナルの時期になってもそれぞれの要素を曲のなかに溶け込ませることで精一杯だった。だが、今季は仕上がりが早く、「プラスアルファで何を練習する?」という余裕もあった。ミスをした時のリカバリーの練習も始め、芽生えてきていた勝負への執着心が活きた。

 結果は合計225.70点でGPファイナル初制覇。目標にしていたGPシリーズ3連勝達成に、「ちょっとウルッときた」と坂本は涙を浮かべた。それだけ内心では重圧を感じていたのだ。

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