宇野昌磨の新境地 師匠の「魔術」や高橋大輔の滑りを新プログラムに落とし込む

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

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【新フリーは抒情的】

 10月7日、さいたまスーパーアリーナ。『カーニバル・オン・アイス』で、宇野昌磨(25歳/トヨタ自動車)は、2023−2024シーズンの新しいフリープログラムを発表している。

 ショーの大トリで登場し、黒を基調にカーキが入り交ざったような衣装で、散りばめられたストーンを輝かせた。黒くストレートの前髪が、風を受けてふわりと上がった。

 曲は『Timelapse』『Spiegel im Spiegel』という2曲をアレンジしたもので、静ひつな幻想世界といったテイストか。内面が湧き出るような旋律で、にぎやかで活発というよりは、ゆるやかに抒情(じょじょう)的に心が満ちる。

 表現において難易度の高い曲であることは間違いない。スローな動き、動いているが止まっているようなところから疾走するなど、肉体的なバランスが随所で求められる。

 そこに生み出される緩急は特別な感覚で、それがイコール芸術になるはずだ。

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プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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