宇野昌磨のコーチ、ランビエルと高橋大輔の「対決」長い年月をかけて身につけた技の数々

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 坂本 清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

【ランビエルと宇野昌磨に共通する気配】

 2006年トリノ五輪で銀メダルを獲得し、世界選手権は20052006年と連覇するなど、かつて一世を風靡したステファン・ランビエル(スイス)の流麗なスケーティングは、健在だった。

『フレンズ・オン・アイス』公開リハーサルに登場したステファン・ランビエル『フレンズ・オン・アイス』公開リハーサルに登場したステファン・ランビエルこの記事に関連する写真を見る 体のラインだけで静ひつさを醸し出す。『交響曲第5番 アダージェット』のピアノの旋律に、身をゆだねる。鍵盤をなでるような丁寧さと大きな体躯(たいく)を活かしたダイナミックさで、丹念に音を拾い上げる。

 上半身と下半身が、別の生きもののように動いて、たなびくシャツの袖や目にふわっとかかる前髪すら、演出のように映った。スピンの安定感と速さは傑出、芸術性に通じていた。最後のポーズ、振り上げた腕やひねった首の角度が何とも言えず美しかった。

 感極まった拍手のなか、既視感が浮かぶ。

 現在の世界王者である宇野昌磨に通じる気配があったのだ。

 言うまでもなく、ランビエルは宇野のコーチであり、窮地から救い、羽ばたかせた師匠である。肩甲骨の使い方ひとつで背中は美しく見えるし、指先にまで神経を通わせることで演技の引力は増すわけだが、伝承されるものはあるのか。

 ふたりは体格も年齢も違うし、ランビエルだけの色があるように、宇野だけの華やかさもあるが、どこか似た気配をまとうのだ。

 師弟関係のふたりだが、フィギュアスケーターたちはそうやって何かをシェアし、受け継ぐのだろう。

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