女王・坂本花織、新プログラムはギリギリの追い込み「夏休みの宿題みたい」 (2ページ目)
●直前の追い込み「夏休みの宿題みたい」
8月13日、滋賀。台風7号が徐々に近づいてくるなか、大会は行なわれている。女子シングルのショートプログラム(SP)で、坂本は最終グループで登場した。
「2分50秒、ずっと緊張しっぱなしでした。いつもならアイスショーが(新プログラムの)初お披露目の場になるんですが、今回はこの試合が初めて。ジャンプもスピンも全部(うまく)やらないと!って、すごく緊張しました」
坂本は彼女らしく快活に振り返った。SPの結果は67.28点で、2位スタート。本意ではないスコアだが、あくまで試運転だ。
「自分の見せどころとも言える(ダブル)アクセルの失敗は悔しい。自分のなかではスピードが足りなかったのが失敗の原因かなって。まあ、ショートもフリーも夏休みの宿題みたいで、直前の追い込みでギリギリ間に合うかだったので。
アイスショーでフリーはたくさん滑ってきたんですが、ショートは時間がとれず、息はしんどいし、足にも来るし。滑り込めていないなって実感しました」
女王は反省の弁を口にしたが、焦りは見えない。
自ら選んだドラマ曲『Baby, God Bless You』で、心境の変化も味方につける。今年に入ってふたりの姉が出産し、姪っ子、甥っ子を得た。日々、姉たちから送られる写真や動画に「成長が早い!」と励まされ、ふたりを両手に抱きかかえた写真に癒されているという。
子ども、出産に携わる人との親交が多くなっているのを必然とし、その曲を踊る意味を見つけた。
「今年は去年のように(北京五輪でメダルを獲得し、世界選手権で優勝したことで)モチベーションが下がる難しさはなくて、いい感じで前向きに挑めています。この時期に3(回転)+3(回転)を跳べるのは稀なので、うれしかったですね。最後のスピンも間違えたし、パニックになっていましたが(笑)」
彼女は失敗を語っているのに、福を招くような明朗さで言った。その懐の深さに真の強さがにじんだ。
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