天才ジャンパー伊藤みどりが53歳で国際大会出場へ「ダブルアクセルが跳べなくても氷の上なら人生を語れる」 (3ページ目)
●「今表現しなくていつするの」
5月の大会へ向けつくったプログラムは、豪華なメンバーが振り付けと音楽をサポートしている。世界のトップスケーターの振り付けを担当しているデイビッド・ウィルソン氏と、ピアニストの福間洸太朗氏だ。
「デイビッド・ウィルソンさんが振り付けをしてくださるという話を聞いた時は、超一流の振り付けを自分がこなせるのかなと思っていました。
もともと満知子先生がデイビッド先生の振り付けがすばらしいということをご存じだったこともあって出会い、私のプロスケーター時代に毎年振り付けをお願いしていました。
デイビッドさんはそこから有名になって、今やトップ選手を現在のルールに合うように振り付けているので、プログラムをルール関係なくやりたいように滑っている私が果たしてどこまでできるんだろう、と(笑)。
でもやっぱり専門家なのですごくいいプログラムができましたし、私の演技の幅を広げることができたと感じています。せっかく再会してできたプログラムなので、うまく表現できたらいいなと思っています」
5月の国際大会へ向け練習に励む伊藤さん photo by Noguchi Yoshieこの記事に関連する写真を見る 前回まではダブルアクセルを跳びたいというモチベーションで参加していた大会に、今回はどのような思いで挑むのだろうか。
「ストーリー性のあるプログラムをつくったので、ジャンプだけでなくプログラム全体でストーリーを表現できたらいいなというのが目標です。
高度なテクニックは入っていませんが、今できる表現を、ましてや最高の先生に振り付けしていただいているので、今表現しなくていつするの、というくらいトータル的なフィギュアスケートのよさを表現する。そこが大事ですし、それを見せに行きたいなと思っています。
滑るって、気持ちがいいし、楽しい。滑っている時のリンクの匂いとか、小さい頃に感じた風を切る感じはスケートじゃないと味わえません。
やっぱりそれは健康じゃないと感じることができないから、健康が続く限りは小さい時に感じたフィーリングを忘れずに滑りたいなと思いますね」
この記事に関連する写真を見るインタビュー後編<伊藤みどりがフィギュアスケートの現状に「寂しく感じる」理由とは? 女子世界初のトリプルアクセルジャンパーが語るスケーター人生>
【プロフィール】
伊藤みどり いとう・みどり
1969年、愛知県生まれ。6歳からフィギュアスケートの競技会への参加を開始し、小学4年の時、全日本ジュニア選手権で優勝し、シニアの全日本選手権で3位。1985年の全日本選手権で初優勝し、以後8連覇。1988年カルガリー五輪で5位入賞。同年には女子選手として初めてトリプルアクセルを成功させる。1989年、世界選手権で日本人初の金メダルを獲得。1992年アルベールビル五輪で銀メダルを獲得後、プロスケーターに転向。その後、アマチュアに復帰し1996年の全日本選手権で9回目の優勝を果たしたのち引退。現在は、指導や普及に努めている。
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