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宇野昌磨は「今年一ひどい」状態から今季世界最高得点をマーク。世界フィギュア好発進を引き寄せた「瞬時の判断」を振り返る (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

●本番直前は「今年一、ひどい状態」

 何が彼をそこまで本気にさせたのか?

「今年一、ひどい状態」

 宇野本人がそう告白するほど、最近10日間ほどは調子を落としていた。大会開幕前日の公式練習でも、類がないほどジャンプの成功確率が低かった。特にループ、サルコウ、フリップの3本は素人目でも調子が狂っていた。

「全部のジャンプが調子悪いので、靴の(問題の)気もするんですけど、だからと言って、どうすることもできない。

 跳ぶ前に跳べるイメージが湧かないので、どうしたものか。20%の確率のジャンプで、いろいろ模索はしていますが、これって変わる気配はないので。これでやるって覚悟を決めて、自分で見つけるしかない」

 宇野は淡々とした口ぶりだったが、練習では限界まで攻めていた。それが翌日の公式練習でのケガにもつながったか。サルコウの着氷で右足首を捻り、氷の上に崩れ落ちた。

 不調に加え、ケガまで背負うことになった。ケガは予防をしていたことで、そこまで大事には至らなかったという。しかし、試合の日の朝の公式練習では恐る恐るの様子だった。

「逆境に強いかはわからないですけど。こういう経験は過去にもしてきて。痛いなかでの練習もやっていました。

 当時は身のためにならないって思ったこともありますが、そのおかげで予想ができました。どこをかばって、どういうジャンプになるかって」

 宇野は言った。幼い頃から練習の虫だった生き方に、強さの幅が見えた。並の選手なら屈するところ、瞠目(どうもく)すべき底力だ。

「悪いからと言って、救済もない。今の自分は何ができるか、それだけで。フリップが痛くて跳べないんだったら、他のジャンプ。跳べそうなら、絶対フリップって決めて。

 自分は直前に変えたジャンプで成功した例がほとんどないので。6分間練習では、いつもどおり跳ぶことができていて、右足のケガの支障なく滑ることができました」

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