宇野昌磨は「今年一ひどい」状態から今季世界最高得点をマーク。世界フィギュア好発進を引き寄せた「瞬時の判断」を振り返る (4ページ目)
●世界連覇へ向け「できる」
喝采を浴びたのは、当然だった。スケーティングの質で他を圧倒していた。柔らかい肩甲骨、股関節でステップを踏み、指先まで音を拾った。プログラムコンポーネンツでは、2位のイリア・マリニンに6点以上も差もつけた。
「フリーに向けては、ショートが終わって気持ちがたかぶっていているので、勝手に『できる』と思っていますが。どう挑むべきか、まずは冷静に練習をしながら考えたいと思います」
落ち着いた様子で語った宇野は、すでに次へ視線を向けていた。彼の原点は練習で自らと向き合うことなのだろう。世界連覇への祝祭が近づいた。
3月25日、フリーは『G線上のアリア』で、会場は再び興奮のるつぼと化す。日の丸が振られ、バナーが掲げられ、風景が色づく。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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