宇野昌磨が全日本フィギュアSPで見せた「逃げない」生き方。「どの試合も成長できるように」
全日本フィギュアSPでまとまった演技を見せた宇野昌磨この記事に関連する写真を見る 宇野昌磨(24歳、トヨタ自動車)は『オーボエ協奏曲』の旋律に合わせて、トリプルアクセルを高いジャンプで決めた。そこからの演技は恍惚(こうこつ)に満ちたものだった。スピン、ステップ、すべてでレベル4を獲得し、曲の盛り上がりに全身を使って、氷の上で弾む。演技を終えてポーズを決めると、達成感から右腕を振り下ろし、小さく拳を作った。
「ガタッ」
一斉にスタンドの観客が立ち上がり、備えつけの椅子が音を立てた。満員の会場が、拍手で空気を震わす。コロナ禍で声を出すのが禁じられているだけに、「声援」を届けようと、手をたたく懸命さはいつも以上だった。「Shoma Uno」というバナーを掲げ、小刻みに揺らし、身をよじるように熱い息を吐き出した。瞬間的に、気温まで上がったかもしれない。
「調子がいい状態だったら、悔やむべきところがある演技だったと言えるかもしれませんが、朝の公式練習などを振り返ると、もっと悪い演技になっても不思議ではなかったと思います。"今"ということを考えると、いい演技だったのかな、と」
演技後、会見の席に座った宇野は前髪をかき上げ、胸をなでおろすように言った。
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