2021.12.25

宇野昌磨が全日本フィギュアSPで見せた「逃げない」生き方。「どの試合も成長できるように」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

全日本フィギュアSPでまとまった演技を見せた宇野昌磨全日本フィギュアSPでまとまった演技を見せた宇野昌磨 この記事に関連する写真を見る  宇野昌磨(24歳、トヨタ自動車)は『オーボエ協奏曲』の旋律に合わせて、トリプルアクセルを高いジャンプで決めた。そこからの演技は恍惚(こうこつ)に満ちたものだった。スピン、ステップ、すべてでレベル4を獲得し、曲の盛り上がりに全身を使って、氷の上で弾む。演技を終えてポーズを決めると、達成感から右腕を振り下ろし、小さく拳を作った。

「ガタッ」

 一斉にスタンドの観客が立ち上がり、備えつけの椅子が音を立てた。満員の会場が、拍手で空気を震わす。コロナ禍で声を出すのが禁じられているだけに、「声援」を届けようと、手をたたく懸命さはいつも以上だった。「Shoma Uno」というバナーを掲げ、小刻みに揺らし、身をよじるように熱い息を吐き出した。瞬間的に、気温まで上がったかもしれない。

「調子がいい状態だったら、悔やむべきところがある演技だったと言えるかもしれませんが、朝の公式練習などを振り返ると、もっと悪い演技になっても不思議ではなかったと思います。"今"ということを考えると、いい演技だったのかな、と」

 演技後、会見の席に座った宇野は前髪をかき上げ、胸をなでおろすように言った。