本郷理華が語る全日本への思い。休養後に生まれた気持ちの変化とは (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 田中宣明●撮影 photo by Tanaka Nobuaki

 24歳になる本郷は、過去7シーズン連続で全日本に出場している。2014年には2位で表彰台に上がった。国際大会にも数多く出場し、世界選手権は3度連続出場、四大陸選手権では2年連続で表彰台に立っている。それでも、全日本出場は格別だという。

「(西日本のフリーは)最初、思い切っていけず、ジャンプ(3回転フリップ)も失敗して。中部ブロックよりも緊張していたと思います。でも、次のルッツを飛べたので、流れに乗ることができました」

 終盤に艶やかなスピンを見せた本郷は、フリー10位だった。総合9位で、全日本出場に滑り込んだ。

 失敗も成功も、その一瞬に凝縮された高揚感を、彼女たちは手放せない。それは強烈な引力なのだろう。リンクの上にたった一人で立ち、すべてを背負い、限られた時間で自己表現し、それに数字で評価を下される。そこで体験する勝負の興奮は、彼女たちにしかわからない。今は無観客だが、会場に人が入った時の熱はたまらないものがある。それは、普通の人生ではなかなか味わえない瞬間だ。

 そのスケーターたちの頂点にあるのが、全日本なのだろう。

「全日本に出たかった......」

 無念さを噛み締めるスケーターたちの思いは、生々しくも切実だった。その影も、光を輝かせることになるのだ。

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