2020.11.09

羽生結弦のジャンプとの付き合い方。「今できる限りの最高を目指す」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』 
第Ⅲ部 異次元の技術への挑戦(5) 

数々の快挙を達成し、男子フィギュアスケートを牽引する羽生結弦。常に挑戦を続ける桁外れの精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱を持つアスリートの進化の歩みを振り返る。世界の好敵手との歴史に残る戦いや王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。 

2017年のロステレコム杯フリー演技をする羽生結弦 羽生結弦は、平昌五輪プレシーズンとなる2016ー17シーズン最終戦時点では、3種類の4回転ジャンプを合計5本入れる構成への手ごたえを感じていた。ただ同時に、迷いも口にしており、それは4回転を5本入れると、構成上、武器と自認するトリプルアクセルを複数回跳ぶことができなくなるからだった。

 しかし、連覇を狙う平昌五輪シーズン直前の17年8月の公開練習で挑戦を表明。フリーに4回転5本を入れ、そのうち後半にサルコウとトーループの連続ジャンプを含めた3本とする高難度の構成だ。ショートプログラム(SP)は後半にトリプルアクセルと4回転トーループ+3回転トーループを入れる構成とした。曲は、SPが「バラード第1番ト短調」、フリーが「SEIMEI」で、ともに再演することにした。

 シーズン初戦のオータムクラシックは、10日前に右膝を痛めた影響もありプログラムを一部変更。それでもSPは冒頭に入れた4回転サルコウと後半のトリプルアクセルでGOE(出来栄え点)満点の3点。最後の4回転トーループ+3回転トーループでも2.8点評価の完璧な滑りで、自身のもつ世界最高得点(当時)を更新する112.72点を獲得した。

 4回転ループを封印したフリーは、冒頭からルッツ、ループ、フリップの3回転を続け、後半に4回転3本の連続ジャンプと2本のトリプルアクセルを入れる構成にした。本番では後半のジャンプを意識するあまり、ミスを連発する結果となった。