2020.11.02

羽生結弦が考える「演技を完成させる」ために不可欠な要素とは

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』 
第Ⅲ部 異次元の技術への挑戦(4) 

数々の快挙を達成し、男子フィギュアスケートを牽引する羽生結弦。常に挑戦を続ける桁外れの精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱を持つアスリートの進化の歩みを振り返る。世界の好敵手との歴史に残る戦いや王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。 

2016年NHK杯フリー演技の羽生結弦 羽生結弦は2016ー17シーズンに、4回転ループの採用に踏み切った。その理由のひとつは、負傷した左足甲への負担が少なく、ケガで歩くことも制限されていた時期を含めた2カ月強の休養期間を経て氷上練習を再開した時、最初に跳び始めたのがループだったからだ。

 左つま先を氷に強く突くトーループを1日1回は跳んでいいという許可が出たのは、8月終盤になってからだった。そうした状況下、4回転ジャンプで最初に練習を再開できた4回転ループは、夏場には高い確率で跳べるようになっていた。

 公開練習で羽生が見せた4回転ループと4回転サルコウは、これまで以上に回転が速くなっているようだった。その理由とループに挑戦する意味を羽生はこう語った。

「やっぱりループを練習することで体の締め方が安定してきたのはあるし、軸の作り方が安定してきました。何より、プログラムの中でループが一番難しいジャンプになるので、サルコウが2番目の難度のジャンプという意識になって自信も生まれると思います」