2020.10.26

羽生結弦は固定概念を打ち破る。挑戦する楽しさを体現した2015年の熱演

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』 
第Ⅲ部 異次元の技術への挑戦(3) 

数々の快挙を達成し、男子フィギュアスケートを牽引する羽生結弦。常に挑戦を続ける桁外れの精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱を持つアスリートの進化の歩みを振り返る。世界の好敵手との歴史に残る戦いや王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。 

NHK杯SPで歴代世界最高得点を獲得した羽生結弦  
2015年のスケートカナダで、羽生結弦は、1年間の休養から復帰してきたばかりのパトリック・チャン(カナダ)に敗れ、優勝を逃したことを悔しがっていた。だが羽生は、その悔しさを次への挑戦のエネルギーにした。

 1カ月後のNHK杯の公式練習は、ショート・プログラム(SP)の曲かけで冒頭に4回転サルコウ、その後に4回転トーループ+3回転トーループを入れる、4回転2本の新しい構成を披露。そして練習後の記者会見で、その構成に本番で挑むことを表明した。羽生は理由をこう語った。

「スケートカナダでショート、フリーともに演技後半に4回転を入れるプログラムをやって、『もうちょっと挑戦できるな』と思いました。エキシビションの練習でも、イーグルからの4回転サルコウや4回転トーループをやってみたら感覚が良かったので、難しい構成ではありますが、やってみたい、と。後半の4回転は、後々にショートでも4回転を2回入れるための練習だと考えていたので、ブライアン(・オーサーコーチ)は『もうやるのか』とビックリしていましたが、スケートカナダ後にトロントへ帰る時にはすでに決めていました」

 後半の4回転ジャンプに挑む予定だった前季は、初戦の中国杯SPで試みたものの、フリーの前に衝突のアクシデントに見舞われた。結局、そのプログラムは挑戦できたのは1回だけだった。