本田真凜、シニアデビュー後の挫折で得た「スケーターとしての厚み」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

東京選手権フリー演技の本田真凜東京選手権フリー演技の本田真凜 10月10日、フィギュアスケート東京選手権。リモート会見に出席した本田真凜(19歳、JAL)は、競技後の興奮を抑えられない様子だった。

「まだドキドキしてる!」

 声は上ずり、高揚感が伝わってきた。

 フリープログラム、本田は「ラ・ラ・ランド」で挑むつもりが、間違った曲のCD(レディー・ガガの「I'll Never Love Again」)を提出していたという。今年3月、ステファン・ランビエルに振り付けしてもらった曲だが、未完成のプログラムだった。しかし、「1分経ったら失格」という切迫した状況で、更衣室からCDを持って来るのは間に合わず、腹を決めた。振り付けはアドリブ、曲の尺は足りるのか、ジャンプは何を何本入れ、スピンはどこで何を入れるか、瞬時に計算した。

 滑り切ることができたとき、本田は一つの物語を作った。天才性が出た瞬間だ。

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