羽生結弦の心に火をつけた「衝撃」。チャンとの戦いで手にした収穫とは (4ページ目)
中盤のトリプルアクセル+3回転トーループを、完璧に決めると羽生は波に乗った。その後も2つのコンビネーションジャンプを含む4つのジャンプをきれいに決め、スピンもすべてレベル4をもらう演技で滑り切った。カナダ大会を13.78点上回る168.22点を獲得し、合計も263.59点まで伸ばした。
「カナダ大会は、その前のアメリカでの町田選手の優勝を見て、プレッシャーや緊張感もあって、勝ちたいという思いが強かったですね。その後、髙橋選手がNHK杯で優勝し、(総合ポイントの)上位をとるのが大変になったので、ファイナルを目指すというより、今できる自分のことに集中しようと思いました。
前年シーズンでは、前半の大きなジャンプでミスが出たら、気持ちが落ち込んでいたと思いますが、今回は演技の後半に落ち着いて修正できた。カナダからの2週間弱で、フリーでも少しずつ完成度を高めていると思うので、ファイナルに向けてもっといいプログラムを作っていけるかな、と思います」
こう述べた羽生の前に、今回もチャンが立ちはだかった。チャンはフリーの全要素で加点をもらい、芸術要素の5コンポーネンツもすべてが9.39から9.86点と、高い評価を獲得。フリーは196.75点、合計で295.27点という当時の世界歴代高得点で完勝した。
2013年フランス大会は、パトリック・チャン(中央)が強さを見せつけ優勝。羽生は2位だった ジャンプで軸がブレ気味になっても、きれいに跳んでしまう技術の高さ。スローテンポな曲でもメリハリを付けた重厚なスケーティングで、技と技のつなぎでも常に表現を意識する滑り。この時、スピードとキレで高い評価を得ている羽生も、重厚さという面ではチャンになかなか対抗できなかった。
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