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「髙橋大輔が五輪に連れて行ってくれた」―振付師・宮本賢二が語る秘話 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto)

『eye』を2人で聴いた時に「この曲はおしゃれだよね」という話が出ました。スピード感があって紳士的な曲でもある。イメージとしては「おしゃれ紳士の感じで作ろうね」と言って、笑いながら作りました。

 僕が振り付けた髙橋選手のプログラムに、『ザ・クライシス』というエキシビションナンバーがあります。そのプログラムはスケート本来の美しさと、彼の美しい動きとスケーティングが表現できています。実は『eye』を作る時の20曲くらいの候補曲の中に、この『ザ・クライシス』も入っていました。ただ、当時の彼は、この曲を聴いて「嫌だ」と言いました。「僕は好きじゃない」と拒絶したのです。ところが、その何年後かにエキシビションナンバーを作るときに「この曲がいい」ということになりました。気持ちに変化がありました。

 このことからもわかるように、彼も経験を積んでスケートの歴史を刻んだことで、考えや気持ちが変わっていく。そのことに面白さを感じました。同じ曲を聴いても、時間の経過で捉え方が違ったり、心境の変化があったりするものなのです。

 髙橋大輔というスケーターは、貪欲さがあり、いろんな表現ができますが、それ以上に、周囲の人を成長させるところがあります。こちらのイメージや想像をはるかに超えていく才能の持ち主なので、僕たちの思考も広くなっていくのです。だから、いろいろな振付師の方から「髙橋大輔の振り付けをしてみたいよね」という話が出てくるのだと思います。

『eye』を振り付けたときに気をつけたことは、どこをどう取っても、得点が出るようにしたことです。1点でも多く点が取れるように。他の選手でもそうですが、僕は、今年は昨年よりも得点が上がるようにしよう、今年は昨年よりも格好良く見えるようにしようと思ってやっています。そのためには、選手をよく観察して、よく話をして、選手の動きやすさや表現したいことを理解して作っていくことが必要になります。

 スケーターにとってプログラムとは、大事なパートナーなのだと思います。特にプログラムの選曲は、最初の一歩としてはかなりのウエイトを占める大事な部分です。シーズン初めに作ったプログラムを一生懸命に練習した選手にとって、そのプログラムはシーズンの終わりには最高のパートナーになっているものであり、違和感なく選手の隣に一緒にいるような存在だと思います。

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