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五輪を目指す髙橋大輔。アイスダンスで感じた「今までにないもの」

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

アイスダンスで北京五輪を目指す髙橋大輔(写真は昨年のメダリストオンアイス)アイスダンスで北京五輪を目指す髙橋大輔(写真は昨年のメダリストオンアイス) 1月19日、広島。アイスショー「プリンスアイスワールド2020」は公演2日目を迎えていた。大盛況で、ほとんどの席が埋まった。

 巨大な熱の渦の中心で、髙橋大輔(33歳)はエキシビション曲「Krone」の音と調和し、しなやかな滑りを見せた。黒いロングコートで帯を締めると、裾がフレアになってひらりと跳ねる。裏地の赤が見えた。宙高く跳ぶアクセルなども入れているが、プログラムの動き自体は激しくない。

 しかし、その静けさはスケーターとして深淵を表わしていた。スローな表現は、技術が拙いと粗さや雑が出る。誤魔化すことができない。その演技は静謐で、厳かさがあった。

 複数の照明を受けると、髙橋は6つの影を拵えられた。それは分身のように整然としていた。奏でるピアノの音色は、切なく狂おしかった。彼は顔色をあまり変えず、わずかな動きで音そのものを表現していた。約20年に渡って、シングルスケーターとして勝ち取った技術だろう。

 今年から転向を表明しているアイスダンスで、それは武器となるか。

「大ちゃん(髙橋大輔)は、音の捉え方がやっぱり違います。腕の使い方ひとつから体の動かし方、エッジの使い方。どれも、ダンスに生かせるはず」

 アイスダンスでカップルを組む、村元哉中の髙橋評である。

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