課題をクリアした羽生結弦。今シーズン本当の戦いがここから始まる (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 羽生は、この日の朝の公式練習は不安しかなかったという。一昨年はSP前日の公式練習でケガをし、平昌五輪まで休んだ。さらに昨年はSPで満足できる結果を出しながらもフリー当日の公式練習でケガをし、出場は強行したがその後のGPファイナルと全日本選手権は出場できず、3月の世界選手権にぶっつけ本番で臨まなければいけなかった。

「これでファイナルで戦えるなという気持ちを持ててきた」と羽生は語った「これでファイナルで戦えるなという気持ちを持ててきた」と羽生は語った「とにかく最後までケガをしないようにしたいという不安がものすごく強くて、試合とはまた違った緊張感がありました。もちろんジャンプはダメだったけど、それはケガをしたくない気持ちが影響したもので、技術的には問題なかったと思います。だから、あの練習が終わってからは、ある程度ホッとできました」

 本当ならGPファイナルも、4連覇にとどまらずもっと勝利数を増やし、新たな扉を開きたかった。それをケガで断念せざるを得ず、モヤモヤした期間が続いたからこそ、今はファイナルで勝ちたいと思う。強力なライバルのネイサン・チェン(アメリカ)がいるからこそ、彼と本気で戦って勝利を手にすることを熱望しているのだ。

 今回のNHK杯をそのための通過点として、安堵の笑みを浮かべられる結果で終えた羽生。彼の今季の本当の戦いは、これから始まる。

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