2019.11.24

恐るべき完成度で優勝。超然とした
コストルナヤが見せた16歳らしさ

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 11月23日、真駒内アイスアリーナ。その脇にある体育館を仕切ってあつらえた会見場に、アリョーナ・コストルナヤ(16歳)はひとりだけ遅れて入ってきた。

NHK杯で優勝したアリョーナ・コストルナヤ 昨シーズンのグランプリ(GP)ファイナル王者である紀平梨花(17歳)、世界選手権女王であるアリーナ・ザギトワ(17歳)のふたりを、壇上で待たせることになった。暫定的に始まった会見の途中で到着したコストルナヤは、無邪気なのか、豪胆なのか―−−。大会王者として中央にゆっくりと座ると、スマートフォンのカメラを起動させ、左横に座るザギトワの表情を楽しそうに撮影した。

「目標? 私はいつも同じよ。美しく綺麗に滑りたい。自分自身も、観客のみなさんも幸せになるように」

 質問を受けたコストルナヤは、やや冷たいほどの笑みを浮かべ、そう言ってのけた。本心で言っているのか、あるいはメディア対応を訓練されているのか。いずれにせよ、勝者の自信に満ちていた。

 NHK杯、コストルナヤはまずショートプログラム(SP)で紀平が持っていた世界最高得点を更新し、ど肝を抜いている。快挙にもかかわらず、その表情は大して変わらなかった。膨大な練習量に自信があるのか、結果に対して一喜一憂がない。

<そんなに驚かないでよ>

 そう言って諭すような、どこか達観した空気をまとっている。

 事実、フリーも落ち着いていた。序盤のトリプルアクセルは得点を稼げなかったが、プログラム自体が崩れることはなかった。3回転フリップ+3回転トーループのコンビネーションジャンプでは10点台をつけただけでなく、GOE(出来ばえ点)も2.27点を稼いでいる。完璧に近い出来で、失敗したトリプルアクセル以外はすべてのジャンプで多くの加点がついた。ロステレコム杯でアレクサンドラ・トゥルソワが叩き出した世界最高の合計点に次ぐスコアだった。

――トリプルアクセルのミスのあとも冷静でしたね?

 記者からの質問に、彼女は胸を張って答えている。

「ひとつのミスが、次の演技に影響を与えるなんてありえません。そこにこそ、シニアとジュニアの差(がある)。気持ちを切り替えられますよ」