2019.11.19

髙橋大輔がアイスダンサーを目指す理由。
「簡単でないのは承知のうえ」

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

アイスダンスへの挑戦を発表した髙橋大輔「フィギュアスケートを競技として長くやっていきたい」

 日本の男子シングルスケーターとして数々の金字塔を打ち立ててきた髙橋大輔は、そう言って、今年9月末にアイスダンス転向を決めた。

 昨季、4年のブランクを経て現役復帰を果たし、全日本選手権では5年ぶりの表彰台となる2位。再び世界選手権に立てるチャンスもあったが、「世界で戦える準備ができていない」と自ら辞退した。だから、復帰2シーズン目の今季は、準備万端整えて世界の舞台に出陣することを期待していた。

 だが、髙橋本人は違う考えだった。

「(シングルで世界の舞台で戦う気持ちは?)なかったですね。もともと現役復帰した時に、世界に行けるかどうかというのはわかっていなかったし、行けないだろうなというところでのスタートだったので。前回はうまくいき過ぎたという部分があって、演技としてはすごくよくなかったです、結果として2位というだけで。

 実力からいうと、シングルでは世界で勝てないと今でも思っています。だから、現役復帰も世界に向かうためというよりも、スケーターとしての自分をまた一からスタートさせたいという気持ちがあった。そこで一番落ち着くのは全日本選手権だったし、それはぶれなかったですね」

 シングルの選手として12月の全日本選手権を最後の試合にするという決断を聞いた時は、髙橋大輔というスケーターを長年応援してきた一ファンとして、驚きと落胆が相まった複雑な心境だった。来季はシングルの競技者としての演技は見られないからだ。だが、シングルスケーターとしての雄姿を見る機会は今後もあるというので、ひとまず髙橋大輔を変わらず応援していける喜びが続くことに感謝した。

「シングルをやり切ったというのはない。新しいものに興味が湧いたのが大きい。アイスダンスをメインにやるが、アイスショーとかでひとりで滑ることもする。シングルを一切やらない、ということではありません」

 来年1月からは、アメリカ・フロリダで著名な振付師兼アイスダンスコーチでもあるマリナ・ズエワ氏に師事して、2022年北京冬季五輪を最大の目標に掲げて、アイスダンスを基礎から学ぶ予定だ。