スケートカナダ圧勝の羽生結弦。
ジャンプに込められていた今の心境

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 4度目の挑戦だったスケートカナダで、322.59点という高得点を獲得して初優勝を果たした羽生結弦。フリーから一夜明けた10月27日、その心境を語った。

高得点を出し、スケートカナダで初優勝した羽生結弦高得点を出し、スケートカナダで初優勝した羽生結弦「320点超えは、エレメンツがひとつ多かったヘルシンキの世界選手権(2016-17シーズン)以来で、本当に久しぶりだからうれしいとは思うけど、実際まだグランプリシリーズの初戦なので、まだまだ気を引き締めなければと思っています。だからすごく地に足を着けている気持ちでいます。

 ただ、今回の試合で、自分がやってきたことが少し肯定されたように感じました。オータムクラシックで点数が出なくて悔しかったのはもちろんあるし、スケートカナダはずっと苦戦していましたから。それを考えて、納得いかない結果になるかもしれないことをある程度は覚悟していたからこそ、今回は僕の滑りを演技としてしっかり評価していただけたのはちょっとホッとしたというか、やっていることに間違いはないんだなと、肯定していただけたような気がしています。

 だからあとは、自分が勝つために、勝ち続けるために何が必要かなということを、常にすり合わせながら練習をしていかないと、という気持ちです」

 羽生は、オータムクラシックのフリーでは最初の2本のジャンプで着氷を乱し、後半のトーループでは回転不足を取られてはいたが、全体的にはGOE(出来ばえ点)加点も低く、演技構成点は8点台も出て最高は9.15点と抑えられていた。

 その評価を見て羽生は、自分の演技の中からつなぎの部分の複雑な動きを外そうかとも考えたという。ジャンプの確率を上げるためにはスピードを落とし、静止した状態からしっかり体勢を整えて跳ぶほうが明らかに確率も上がるからだ。力も使えるのでジャンプ自体も高くなり、幅も出てくる。

 しかし、「それをしようかとも思ったんですけど、僕はやっぱりその道ではないなと考えながら、このスケートカナダに来たんです。それでもう一回、自分がやりたいものをぶつけてみようと思ってやった結果、今回のような評価をもらえた」と笑顔を見せた。

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