2019.10.26

羽生結弦は自分に厳しい。ノーミスで首位発進でも「ノーミスじゃない」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 スケートカナダ競技初日の男子ショートプログラム(SP)。10番滑走の羽生結弦の最初の4回転サルコウは、前日の公式練習の時より少し力が入っているように見えた。だが、それをきれいに決め、GOE(出来ばえ点)4.43点をもらう滑り出し。そのあとのトリプルアクセルも、ジャッジ9人中8人がGOE満点の5点を出す完璧なジャンプにした。

スケートカナダで首位発進の羽生結弦 昨シーズンのロステレコム杯以来の、SP冒頭の4回転サルコウの成功。羽生はその理由をこう話す。

「今回は練習方法を変えてきました。世界選手権からオータムクラシックにかけて。世界選手権までの練習もそうだったんですけど、最初のジャンプを失敗したら、もう一回最初からやり直して、『ノーミスが出来ればいいや』という感じで取り組みました。とにかく、ノーミスだけを念頭に置いてやっていました。

 それが正しかったとも言えますけど、ただ、それだと一発目のジャンプへの集中の仕方が、ちょっとずつ曖昧になっていたかなという感覚もあった。それで、練習ではともかく、氷に乗ったら1~2分で曲かけをするんですけど、その時はもう『絶対に最初のサルコウだけは決めよう』という意識を持って練習をしました。それが今日の結果につながったと思います」

 この日の羽生は、4回転サルコウに不安があったという。実際、午前中の公式練習ではきれいなジャンプを繰り返していたが、演技前の6分間練習では、尻の位置が少し下がってしまう着氷に。それもあって、演技直前にリンクに上がった時も、前の選手の得点が出るまでの時間に、珍しくトーループとサルコウの4回転を2本跳んでいた。

「サルコウに関しては自信がなかったというのと、同じ失敗を絶対に繰り返したくないというのもあった。後半にちょっと疲れが出るだろうなと思ったし、案の定、実際に疲れは出てしまったけど、それでもよかったと思います。トリプルアクセルに関しては、本当にバチッとはまったなと思ったし、オータムクラシックよりもきれいにしようとして、余韻を残しながらできたと思います。ただ、トーループに関してもそうでしたけど、サルコウに関してはとくに6分間練習の最後の1本だったり、演技直前の1本がすごくよかったから、もっとクリアにスムーズに跳べるかなと思います」