宮原知子、女王の気迫。全日本首位発進も紀平梨花の爆発力を警戒 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 平昌五輪シーズンだった昨季は、股関節痛のケガからギリギリの調整を試みて復帰。五輪出場という夢を実現させた。そして、あと一歩でメダル獲得となる総合4位という結果を残した。できることはやり切れたという思いと、手が届きそうだったメダルを逃した悔しさが混在した気持ちになった。

 まだスケート人生は終わりじゃない。自分に何が足りないのか、何を身につければさらなるレベルアップができるのか――自分を見つめ直した宮原が出した答えが、シニアに転向してから突きつけられたジャンプの回転不足を、根本から修正するという大きなチャレンジだった。ハイリスクでかなり苦しむことが予想されるジャンプ修正に手をつけるべきかどうか、相当迷ったようだが、この壁を乗り越えない限り、自分の成長はないという思いに至ったという。

「挑戦のシーズン」と位置付けた今季、宮原は回転不足が課題のジャンプ修正に一から取り組み始めた。陸上トレーニングで体幹を鍛え、体のバランスを整える一方で、ジャンプの跳び方も、羽生結弦のジャンプコーチであるジスラン・ブリアンコーチから教えを受けた。

 ジャンプの修正をしながら、試合に出続け、そして結果も残していかないといけないという試練も、ひとつひとつクリアしていった。GP大会ではスケートアメリカで優勝、NHK杯では2位。4年連続4度目の出場となったGPファイナルでは、まだ不安定なジャンプの失敗が出てしまい、最下位の6位に終わった。

 NHK杯とGPファイナルでは、2大会続けて同門の妹分である紀平梨花の後塵を拝した。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳んで躍進する16歳の新星が輝きを放ってシニアデビューする様子を間近で見ながら、20歳になった日本のエースは静かに闘志を燃やしていた。

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