織田信成から刺激をもらった宇野昌磨。次戦へ向けて表情は明るい (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 この点は、宇野のロンバルディア杯のフリーを4.90点上回る。宇野はもちろん、現役復帰を発表した髙橋大輔にも、強烈な刺激になる演技だったと言えるだろう。

 織田の演技の勢いに飲み込まれたのか、次のハビエル・フェルナンデス(スペイン)はジャンプでミスを繰り返して157.86点。続く世界王者のネイサン・チェン(アメリカ)も「大学に入って環境が大きく変わったなかで、スケートと学業を両立させるためにはどういうアプローチを取ればいいのか模索中」という影響もあってか、4回転ジャンプで3回転倒し、144.96点にとどまった。

 そんな状況で迎えた宇野の滑走順。宇野は、最初の4回転サルコウが回転不足でステップアウトになり、次の4回転フリップも回転不足で転倒。出だしで「織田が巻き起こした嵐に飲み込まれるか?」とやや不安を感じさせたが、次の4回転トーループをきれいに降りて耐えると、『月光』のゆっくりした曲調で冷静な滑りをして気持ちを立て直した。

 ちなみに宇野は、今シーズン、4回転はサルコウとフリップ、トーループ2本の構成にしているが、それについてはこう語っている。

「4回転ループは踏み切りで抜けることが多いのでやらない選手もいると思うし、実際に僕も抜けたことがあって、それが精神的なストレスにもなっていた。でも、今年は4回転サルコウが跳べるようになって成功回数も多くなり、体力がない状態でもけっこう跳べるようになった。ループではなくサルコウにした方が体力や気持ちを削がれないかなと思ってサルコウにしました」

 そして演技後半は、4回転トーループ+2回転トーループ、トリプルアクセルを2.99点と3.54点の加点をもらう出来にすると、曲調が変わってきた終盤は力強さと勢いのある滑りでトリプルアクセルからの3連続ジャンプや3回転サルコウ+3回転トーループも決める。さらに、メリハリのあるステップとチェンジフットコンビネーションスピンで共にレベル4を獲得した。

 結果はトップの186.69点。冒頭のふたつのジャンプの失敗がなければ200点超えも見えてくる演技だった。

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