佐藤信夫氏・久美子氏(元浅田真央コーチ)に聞く「喜びと苦しみの日々」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

――真央さんが最も変化したのはどこでしょうか?

信夫 スケートというのはひと滑り、ひと滑りじゃないですか。そのひと滑り、ひと滑りを毎日チクッと言っておけば、ふと変化が起きるわけです。その変化がやがて、いつのまにか本人にとっては心地よい変化になるんです。気持ちよく滑れるものだから、少しずつ変わってきたのかな、というふうには思います。

久美子 一番簡単なことを大切にするということですよね。一番簡単なことだから無視するのではなくて、簡単なことを大事にするということの積み重ねですね。

信夫 彼女からすると、受け取り方としては「また同じことを言ってるわ」になるんですけれども、それでもいいんです。何かあった時にふと、それを思い出すというふうになれば。

久美子 でも、そういうときは意外と聞いていた。知らん顔しながらも、真面目にすごく集中してね。

信夫 トップレベルの選手たちというのは、そのときはあえて「フン」と聞いていないようなふりをするんですよ。だからその日は変化は見えないけれど、次の日には必ず変化がある。

久美子「はい、はい」なんて言わないで、いつもよそ見しているんですよ、トップに登り詰めた人たちは。聞きたくない人は聞かないですから。

信夫 だから教えていてイライラもするし、カッカもするけれども、次の日に言ったことがちょっとよくなっているのを見ると、「あ、やった」と思うんです。

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