羽生結弦の今季フリー『SEIMEI』は2年前と、どう変わったのか (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 それでも、この構成が『SEIMEI』というプログラムをさらに進化させるために考えられているのは確かだ。

 ジャンプの後半の基礎点を見ると、昨季は59.73点だったのに対し、今季は64.46点。一方、前半のジャンプの基礎点は、4回転2本の昨季は27.80点だが、4回転ループの他は3回転ルッツと3回転フリップにしている今季は23.30点。この配分には今季のフリーは後半に懸けていることが表れているが、同時に、もちろんこの構成でライバルたちと十分勝負できるともいえる。

 ただし、ルッツは「4回転を跳ぼうと思えば跳べる」(羽生)という状態にあるため、4回転を5本にする可能性も残されている。4回転ルッツを加えれば、基礎点はさらに上乗せでき、昨季の世界選手権で6本の4回転を跳んだネイサン・チェン(アメリカ)の基礎点96.86点に1.5差まで迫る95.36点となる計算だ。

 完成度の高い演技で勝利を目指すという方針をベースに、コンディションや相手関係を見ながら、さらに進化する可能性も秘めている。それが今季の羽生のフリープログラムなのだ。

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