歴代最高にも伸びしろ。羽生結弦の今季SP得点はどこまで伸びるのか

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

オータムクラシックSPで自らの歴代最高得点を更新。次戦での演技が楽しみな羽生結弦オータムクラシックSPで自らの歴代最高得点を更新。次戦での演技が楽しみな羽生結弦 9月21日からのオータムクラシックで初めて披露した、今季の羽生結弦演じる試合用ショートプログラム(SP)の『バラード第1番ト短調』。その秀逸さはピアノ曲と演技との見事なマッチングだった。

 大会の10日前に右膝が痛くなり、4回転ループを封印するという不安を抱えたコンディション。前日の公式練習をいつになく冷静に行なっていた羽生が見せたのは、気持ちを抑えた静かな動きで、正確にジャンプを跳び、盛り上げるべきところはスピードを上げる演技だった。流れるような静けさの中でも、メリハリをつけると同時に、ジャンプを完璧に決め、スピンとステップはすべて最高のレベル4。自己最高得点を更新する112.72点が出て当然という内容だった。

 これが、この日の羽生が感じたままの『バラード第1番』だったのだ。

 今回のSPで羽生のすごさを感じたのは、一度スピンでスピードを上げて盛り上がる部分を作ってから、再度静寂に戻って始まる後半最初のトリプルアクセルだ。羽生自身「今回のプログラムのトリプルアクセルはフワッとした感じで、より音に溶け込むアクセルに仕上がっている」と話していたように、大きく跳び上がり、着氷した直後に「ポン」と小さな音が置かれるシーンは、どこか感動的ですらある。これが羽生結弦のトリプルアクセルなのだ、と──。

 そのプログラムで、今回は冒頭に4回転サルコウを入れ、GOE加点3点の評価を受けた。それについて羽生はこう話した。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る