羽生結弦の事故を教訓に、今すべきこととは?
11月特集 フィギュアスケート新時代 (4)
フィギュアスケート・グランプリシリーズの中国大会、男子フリー最終滑走組の6分間練習で、そのアクシデントは起こった。
ジャンプを跳ぶためにターンをしながら滑っていた羽生結弦が、同じくジャンプの準備動作をしながら滑っていたハン・ヤン(中国)と衝突。羽生の頭部とハンの顎が激突して両者とも氷の上に崩れ落ちた。
なかなか動こうとしないふたり。一瞬の出来事に悲鳴が上がった後、会場は静まり返った。急遽練習が中断されて選手がリンクから上がると、ハンはフラフラしながらリンクから出て、再び倒れ込んでしまった。しばらく動けないまま氷上に倒れ込んでいた羽生も、救護の係員が駆けつけて担架が運び込まれようとすると立ち上がり、リンクの外に出た。見ている者の誰もが、ふたりとも棄権するのだろうかと考えた。
試合前の練習で笑顔を見せる羽生結弦とブライアン・オーサーコーチ かつて2010年のGPファイナルで、小塚崇彦と髙橋大輔が練習中に衝突するアクシデントがあった。今回は、そのときよりも互いにスピードが出た状態での正面からの衝突。日本スケート連盟の小林芳子フィギュア強化部長は「右耳上と顎から出血していただけではなく、鳩尾(みぞおち)も打撲していた。足も負傷していたようだったので、無理して出場することはないと思った」という。
だが、アメリカのチームドクターに応急処置と簡単な検査をしてもらった後、ブライアン・オーサーコーチと羽生が話し合い、本人の意思で出場することになった。
オーサーは「今はヒーローになる時ではないと結弦に言い聞かせたが、試合に出るという彼の決意は固かった。彼の目つきを見て大丈夫だと思い、彼に判断をゆだねた」と話す。
再開された6分間練習に途中から加わった羽生は、トリプルアクセル+3回転トーループを決めて会場から拍手をもらった。だが4回転トーループでは手をつき、4回転サルコウは転倒。リンクから上がる時には足を引きずってヨロヨロとつらそうに歩く状態で、ダメージが残っていることは明白だった。
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